港区のとある駐車場で、思わず二度見してしまう光景が発見された――。

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昼下がり、ビルとビルの隙間にひっそりと存在するコインパーキング。都心らしく、黒塗りの高級セダンや社名ロゴ入りのバンが整然と並ぶその一角で、異様な空気を放つ一台の車があった。
ナンバープレートが、ない。

前にも後ろにも、あるべき白や緑の板が存在しない。まるで「私は匿名です」とでも言いたげに、つるりとしたバンパーだけが無言でこちらを見つめている。

その車を中心に、警察官たちがぐるりと円を描くように立っていた。人数はざっと五、六人。誰もが一様に腕を組み、首をかしげ、時折メモを取りながら、沈黙の会議を続けている。
まるで難事件の現場検証だ。

「どうやって、ここに停めたんだ……?」

空気中に漂っているのは、そんな疑問そのものだった。

この駐車場は、入口でナンバープレートをカメラが読み取り、精算まで管理するタイプ。ナンバーがなければ、そもそもゲートを通過できないはずだ。
なのに、車はきちんと白線の中に収まり、タイヤの向きすら完璧。雑さは微塵もない。
まるで“正規の手続き”を踏んできたかのような、堂々たる駐車ぶりである。

警察官の一人が、しゃがみ込んでバンパー下を覗く。
別の一人は天を仰ぎ、監視カメラの位置を確認する。
さらに別の一人は、駐車場の看板をじっと見つめ、「ナンバー必須」と書かれていないかを探している。

しかし答えは、どこにもない。

周囲には、スマホを構えた通行人がじわじわと集まり始めていた。
「消えるナンバーなんじゃない?」
「スパイ映画のやつでしょ」
「実は最初から存在しない車だったりして」

好き勝手な憶測が飛び交う中、当の車はというと、まるで何事もないかのように静まり返っている。エンジンも切られ、ドアロックも完璧。
逃げる気配も、焦る様子も、まったくない。

結局のところ、「どうやって駐車したのか?」という最大の謎は、その場では解かれなかった。
だが、その不可解さこそが、この光景をただの違反車両ではなく、港区の昼下がりに現れた一編のミステリーへと変えていた。

ビル風が吹き抜け、警察官たちは再び車を取り囲む。
ナンバープレートのない車は、今日も何食わぬ顔で、都会の真ん中に停まり続けている。

――まるで、「答えは簡単には教えない」と言わんばかりに。

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