休憩していると、河川敷のベンチが目に入った。
男性が座っている。
いや、「座っている」というより、そこにしがみついている。
ハア、ハア、ハア。
呼吸が荒い。
しかも音が大きい。必要以上に。
私はなーと顔を見合わせ、近づいた。
「大丈夫ですか?」
私が声をかけると、
なーもすぐ横に立つ。
「息、苦しそうですよ?」
男性はうつむいたまま、
途切れ途切れに言った。
「今……もう一人の人が……助けて……」
——もう一人?
周囲を見渡す。
風と草と、
遠くでボールを蹴る音だけ。
そのときだった。
「すみません、手伝います」
落ち着いた声。
振り返ると、
めがねランナーが立っていた。
いつの間に来たのか分からない。
走っていたはずなのに、息が乱れていない。
「熱中症っぽいですね」
「頭、冷やしましょう」
なーがタオルを濡らし、
私は声をかけ続ける。
めがねランナーは一通り状況を見ると、
「ドリンク、買ってきます」
そう言って、
迷いなく自販機へ向かった。
そのときだった。
少し離れた木陰に、
なにもしていないのに、なぜか安心する男が
立っていたことに、
私はまだ気づいていなかった。

つづく
