10数案のデザインが不採用。デッドロックした国際会議の合意形成を「情報の棚卸し」で突破した舞台裏|ノーベル・プライズ・ダイヤログ東京2015 メインビジュアル・広報ツール一式 設計事例

Branding Case Studies

当初、私たちは求められる要素をすべて盛り込み、表現の切り口を変えた10案以上のビジュアルを提案しました。しかし、どれだけ「美しい絵」を提示しても、主催者両陣営の足並みが揃うことはありませんでした。

迷走の記録:要素を詰め込むほど、本質は見えなくなる
  • 海外本部側の主張: 「ノーベル賞の重みと、過去の国際会議との一貫性が足りない。もっとクラシックであるべきだ」
  • 日本側の主張: 「東京で開催するインパクトが弱い。もっと現代的で、日本独自の先進性を出すべきだ」

一方が頷けば、もう一方が首を振る。提案を重ねるほどに議論は「好みの問題」や「細かな修正の繰り返し」という迷宮に入り込み、本質的な正解から遠ざかっていく。

そこで見えてきたのは、双方が100%合意できる「たった一つの事実」でした。 それは、このイベントの本質が「答えを提示すること」ではなく、**「未知の領域へと続く、終わりのない対話(ダイアログ)」**そのものであるという文脈です。

伝統の継承と、未来への革新。これらを対立する要素として捉えるのではなく、一つの**「深化し続ける知性の構造」**として統合する。これが私の導き出した設計図でした。

私は新しいデザイン案の代わりに、一つの**「シンボル(構造体)」**を提案しました。 それは、深淵へと続くようでもあり、高みへと昇るようでもある「螺旋(らせん)」の構図です。

「デザインを作る」ことをやめ、「イベントの精神性を象徴する『概念の構造』を提示する」

この「情報の棚卸し」による再設計が、長く続いたデッドロックを瞬時に打ち破りました。この螺旋階段という、知性の深まりを象徴するビジュアルに合意が取れた瞬間、それまで対立していた両陣営の視線は、初めて同じ方向を向いたのです。

伝統(歴史) × 探求(未来) = 螺旋(知性の深化)

しかし、ここからが「設計士」としての真の腕の見せ所でした。ポスター、当日配布用のパンフレット、そして数千人が手にするIDカード。それぞれの媒体には、果たすべき「機能」が異なるからです。

  • 情報の優先順位(ヒエラルキー)の徹底: ポスターでは「螺旋のインパクト」で直感的に知的好奇心を刺激し、パンフレットでは登壇者(ノーベル賞受賞者)の顔ぶれとタイムスケジュールを、ストレスなく読み取れる構造に整理。
  • 視認性と知性の両立: 国際会議にふさわしい「信頼感」をベースにしながら、一般参加者が気後れすることなく「自分たちのためのシンポジウムである」と直感できるよう、余白とタイポグラフィのバランスをミリ単位で調整。
  • 一貫性の「設計」: どのツールを手に取っても、同じ「知の探求」という空気感に包まれるよう、トーン&マナーを徹底的に管理。

両組織が満場一致で承認した時の様子。

「会議がまとまらない」「伝えたいことが多すぎて整理がつかない」 そんな時は、デザインを作る前に、30年の知見を持つ設計士にご相談ください。

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